暑い夏の日に、静かに本と向き合う時間を
夏の暑さが続く中、外に出るのも億劫になってしまいますよね。
そんなときに涼しいお部屋でゆっくりと本を開く時間は、心に安らぎを与えてくれます。
そして、読書のひとときをさらに豊かにしてくれるもの、それが「音」の存在です。
窓から聞こえる雨の音、そよ風の音、あるいはお部屋に静かに流れる音楽があることで、本の世界にすんなりと入り込むことができるような気がしませんか?
今回は、そんな「読書に寄り添う音」について考えてみたいと思います。
普段から読書を楽しまれている方も、最近は本から少し足が遠のいてしまっているという方も、きっと新しい発見があるはずです。
静かな時間を大切にするためのちょっとしたヒントとして、お役に立てれば嬉しく思います。
読書空間に音が生み出すやすらぎの時間
本を読むときは完全な無音状態が良いと考える方もいらっしゃるかもしれませんね。
確かに集中したいときには静寂が必要な場合もありますが、実は適度な音があることで、読書の時間がより心地よいものになることも多いのです。
ここでいう「音」とは、決してうるさいものではありません。
背景にそっと寄り添うような音、自然に耳に届く穏やかな音のことです。
これらの音は、読書空間に心地よい「余白」を作り出し、文字から物語を受け取る心の準備を整える働きをしてくれます。
小説の登場人物たちの世界に深く入り込みたいとき、詩集の言葉をじっくりと味わいたいとき、集中しながらもリラックスした状態でいたいとき——そんな様々な読書シーンで、やさしい音がそっと寄り添ってくれると、本との距離がぐっと縮まるような感覚を味わえるのではないでしょうか。
読書時間を彩る心地よい音の選び方
読書のお供にぴったりな音は、その日の気分や読む本のジャンル、そして読み手の好みによって変わってくるものです。
ここでは、多くの方に愛される読書BGMをいくつかご紹介させていただきます。
自然が奏でる音 ― 雨音・風の音・波の音
自然の音には、人工的な音にはない温かさと安心感があります。
特に雨音は、一定のリズムを刻みながらも微細な変化があり、読書時の集中力を保ちつつリラックス状態を作り出してくれます。
夏の夕立の音、しとしとと降る春雨の音、秋の長雨の音——季節によって雨の音も表情を変え、読書の雰囲気をさらに豊かにしてくれるでしょう。
また、風鈴の涼やかな音色や、海辺で波が寄せては返す音も、本の世界と自然に調和します。
実際の雨や波の音が聞こえない環境でも、YouTubeの自然音チャンネルや専用アプリを活用すれば、いつでもお好みの自然音を楽しむことができます。
心に響く楽器の音色 ― ピアノ・ギター・弦楽器
楽器が奏でる音楽も、読書時間の素敵なパートナーになります。
特に歌詞のない楽器演奏や、耳を引きすぎない穏やかなメロディーは、本の内容に集中しながらも心地よい空間を演出してくれます。
ピアノの単音が静かに響くソロ演奏、アコースティックギターの温かな響き、弦楽器が奏でる柔らかなメロディー——これらの音楽は「聴く」というよりも、音に「包まれる」ような感覚をもたらしてくれるでしょう。
ジャンル別音楽の楽しみ方
ボサノバの軽やかなリズムは、軽快な小説やエッセイを読むときにぴったりです。
クラシック音楽の中でも特に室内楽は、文学作品や哲学書との相性が良いとされています。
ジャズの中でも静かなバラードは、大人の小説や回想録を読む時間に深みを与えてくれることでしょう。
読み始める前に「今日はこの音楽と一緒に」とプレイリストを選ぶ時間も、読書の楽しみの一つになるかもしれません。
本と音楽の組み合わせを楽しむ
また、「この本を読むときは必ずこの音楽を」という、あなただけの特別な組み合わせを見つけてみてはいかがでしょうか。
季節感のある本には季節を感じさせる音を、冒険小説には少し躍動感のある音楽を、恋愛小説には優しいピアノ曲を——そんなふうに、本と音の組み合わせを探る楽しみもあります。
お気に入りの一冊にお気に入りの音を添えることで、その時間は特別なひとときへと変わります。
同じ本を再読するときも、その音楽を流すことで、初回に読んだときの感動や思い出がよみがえってくるかもしれません。
読書前のひととき ― 音で心を整える準備時間
本を開く前の数分間、音を通して心を整える時間を持つことで、より深く物語の世界に入っていくことができます。
これは「今から読書の時間です」と自分自身に合図を送る、大切な準備の時間でもあります。
お気に入りのカップでお茶を淹れながら、その日の気分に合った音を選んでみてください。
そして深呼吸をひとつして、そっと本を開いてみましょう。
このような小さな儀式があることで、読書が単なる「やるべきこと」から「自分を大切にする時間」へと変化していきます。
忙しい毎日の中でも、ほんの少しの時間でできることだからこそ、ぜひ一度お試しいただければと思います。
文字から音を感じる読書体験
読書とは、文字を通して様々な感覚を味わうことでもあります。
音に関する本を読むことで、新たな読書の楽しみ方を発見できるかもしれません。
ここでは、音楽と人の心の関わりについて深く考察された2冊の本をご紹介いたします。
どちらも医師であり音楽愛好家でもあった日野原重明先生によるものです。
『音楽力』日野原重明 著
この本では、音楽が私たちの体や心に与える影響について、医学的な観点から分かりやすく解説されています。
なぜ音楽を聴くと心が安らぐのか、なぜ特定のメロディーに懐かしさを感じるのか——そういった素朴な疑問に、医師としての知識と音楽への深い愛情をもって答えてくれる一冊です。
日野原先生自身の音楽体験も織り交ぜながら書かれており、読み進めるうちに音楽の持つ力について自然と理解が深まっていきます。
音楽を聴きながら読書を楽しまれる方にとって、きっと新しい発見があることでしょう。
『音楽の癒しのちから』日野原重明 著
こちらの本では、音楽がもたらす癒しについて、より深く掘り下げて考察されています。
単に「音楽は癒される」ということではなく、なぜ人は音楽によって心の平安を得ることができるのか、その仕組みについて丁寧に説明されています。
また、静寂の持つ力についても触れられており、音楽と静けさの関係性についても学ぶことができます。
読み終えた後は、きっと音楽を聴く時間、そして静かな時間の両方を、より深く味わえるようになるのではないでしょうか。
これらの本を通して、「読むことで音を感じる」という新しい読書体験を楽しんでいただけると思います。
季節に合わせた音選びの楽しみ
夏の読書時間には、季節感を取り入れた音選びも素敵ですね。
蝉の声が聞こえる午後には、それと調和するような静かな音楽を選んでみる。
夕立の音が窓から聞こえてくる日には、あえて無音で本と向き合ってみる。
夜の虫の音が響く時間帯には、その自然の演奏に耳を傾けながらページをめくってみる。
季節の移ろいと共に音の選択も変えていくことで、読書がより豊かな体験となるでしょう。
同じ本でも、春に読んだときと夏に読んだときでは、また違った印象を受けるかもしれません。
家族や友人と共有する音のある読書
読書は一人で楽しむものと思われがちですが、家族や友人と「音のある読書」を共有するのも素敵な時間の過ごし方です。
同じ空間で、それぞれが違う本を読みながら、共通のBGMを楽しむ。
時には読んでいる本について語り合い、その本に合う音楽を一緒に探してみる。
そんな時間を通して、読書の楽しみがさらに広がっていくのではないでしょうか。
一人の静かな読書時間も、みんなで過ごす読書時間も、どちらも音によってより特別なひとときになることでしょう。
デジタル時代の音選び
現代は様々なデジタルツールを活用して、理想的な読書環境を整えることができます。
音楽ストリーミングサービスには「読書用」、「集中用」といったプレイリストが用意されており、自然音アプリでは雨音や森の音を高音質で楽しむことができます。
また、ノイズキャンセリング機能付きのヘッドホンを使えば、外部の音を遮断しながら、お気に入りの読書BGMだけに包まれることも可能です。
技術の力を借りて、理想的な読書環境を作り出すことも、現代ならではの楽しみ方と言えるでしょう。
音と共に歩む読書ライフ
読書は確かにいつでもどこでもできる素晴らしい趣味ですが、そこに「音」という要素が加わることで、その体験はさらに奥深いものになります。
お気に入りの音楽でも、心地よい自然音でも、あるいは静寂そのものでも——あなたにとって心地よい「音」を見つけることで、本と向き合う時間が自分自身を大切にするひとときへと変わっていくのではないでしょうか。
暑い夏の日も、涼しいお部屋で本と音に包まれながら、ゆったりとした時間を過ごしてみてください。
きっと、新しい読書の楽しみ方を発見できることでしょう。
あなたの読書ライフが、音と共にさらに豊かなものになりますように。
そして、本の世界で過ごす静かな時間が、日々の暮らしに小さな幸せをもたらしてくれることを願っています。
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