秋の色をまとう部屋 ― 自然のトーンでつくる“穏やかな暮らし”

アイキャッチ-秋の色をまとう部屋 ― 自然のトーンでつくる“穏やかな暮らし”

自然の色を少しずつ重ねて、お部屋に秋の空気を迎え入れる

窓の外の光がやわらかく傾き、肌に触れる空気にひんやりとした気配が混じる頃。

部屋の中を見渡すと、夏のままの軽やかな色たちが目にとまり、その明るさが少しずつ秋の気配とずれて見えるように感じることがあります。

秋の色をまとうように暮らすこと。
それは派手な模様替えではなく、自然の色を“少しずつ重ねていく”ような変化です。

木や土、枯れ草のような、静かで深みのある色。
それらを暮らしに迎え入れると、部屋の空気だけでなく心の中まで、ゆっくりと穏やかに整っていくのを感じます。

以前の記事(少しずつ“秋の気配”を取り入れる ― 切り替えを楽しむ暮らし方)で、秋色ファブリックや秋の小物を取り入れるお話をしました。

今回はそれをもう少し深めて、秋の色を通して“穏やかな暮らし”を育む方法を、自然のトーンや素材、そして光の変化から見つめてみたいと思います。

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今回ご紹介すること

なぜ「秋の色」は心を落ち着かせるのか

緑から赤へと色づく落ち葉が並ぶ様子。自然の移ろいと秋色の深まりを感じる風景。
少しずつ変化する秋色のグラデーション

自然の色がもつ”静けさ”の正体

秋の色と聞いて、どんな色を思い浮かべるでしょうか。

鮮やかな紅葉の赤やオレンジもありますが、暮らしの中でふと「秋らしさ」を感じるのは、もっと控えめで深みのある色かもしれません。

秋の色は「深みのある色」、「くすんだ色」、「あたたかみのある色」で構成されています

ベージュ
ブラウン
くすんだグリーン
グレーがかったピンク

――これらは派手さがない分、目が疲れず、長時間過ごしても心地よく感じられる色です。

自然界の色は、人間が本能的に安心できる色の組み合わせだと言われています。

森の中を歩いたときや、海辺で夕暮れを眺めたとき、不思議と心が静まる感覚。
それと同じことが、部屋の中でも起こるのかもしれません。

日本の伝統色に学ぶ、秋の色の選び方

日本には、自然の移ろいを繊細に捉えた伝統色が数多くあります。
秋の風景から生まれた色は、どこか懐かしく、静けさと温もりを感じさせてくれます。

暮らしに取り入れたい和の秋色

色名 特徴
からし色 芥子色
(からしいろ)
晩秋の草原や和がらしを思わせる、明るく温かな黄色。クッションカバーやブランケットに取り入れると、部屋にやさしい活気が生まれます。
栗色 栗色
(くりいろ)
栗の実の内皮のような深い茶色。木製の家具やトレイに多く見られる色で、自然な温もりを感じさせてくれます。
紅鳶 紅鳶
(べにとび)
夕焼けの残照や柿渋のような、落ち着いた赤茶色。アクセントとして使うと、空間に深みが増します。
深緑 深緑
(ふかみどり)
常緑樹の深い陰や苔むした石を連想させる色。秋から冬へと続く、静かな力強さがあります。
灰桜 灰桜
(はいざくら)
枯れゆく花びらや朝霧のような、淡くグレーがかったピンク。リネンのカーテンやテーブルクロスに選ぶと、やわらかな光を部屋に招き入れることができます。
藍鼠 藍鼠
(あいねず)
秋の夕暮れや冷たい空気を映したような、青みがかったグレー。落ち着いた大人の雰囲気を作りたいときにぴったりです。
朽葉色 朽葉色
(くちばいろ)
落ち葉や時を経た木材のような、くすんだ茶色。経年変化を楽しむ色として、長く愛用できます。
薄香 薄香
(うすこう)
枯草や淡い月明かりのような、ほとんど白に近いベージュ。ベースカラーとして使うと、他の秋色を引き立ててくれます。
茜色 茜色
(あかねいろ)
茜染めの布や秋の夕陽の芯のような、深い赤。ほんの少し取り入れるだけで、空間に温かな印象を添えることができます。

※色味はご使用の機器や環境によって、実際の見え方と異なる場合があります

暮らしに取り入れるときの「色の分量」

秋色を部屋に取り入れるとき、大切なのは「分量」のバランスです

インテリアの世界では「7:2:1の法則」がよく使われます。
ベース色を70%、サブ色を20%、アクセント色を10%という配分です。

秋色は「アクセント」や「サブ」に使うのがおすすめです。

全体を秋色にするのではなく、白やベージュをベースに、クッションや器、ファブリックなどで秋色を「差し色」として取り入れると、洗練された印象になります。

部屋の色を変えることは、服を着替えるのと似ています。

春夏の白やブルーから、秋のベージュやブラウンへ。

それだけで、暮らしの“肌触り”がやさしく変わっていくのを感じられるはずです。

小さく始める、秋色の取り入れ方

ベージュやブラウンなど、落ち着いたトーンの生地が重ねられている。
「1枚の布」を変えるだけで、暮らしに季節の色が重なっていく

まずは「1枚の布」から――ファブリックで季節を重ねる

秋色を暮らしに取り入れる一番簡単な方法は、ファブリックを変えることです。

クッションカバー、ひざ掛け、テーブルランナーなど

「1枚の布」を変えるだけで、部屋の空気が変わります。

リネンで静かな表情を

リネンは、秋の空気感と相性の良い素材です。

灰桜薄香のような淡い色を選ぶと、光を柔らかく通して、部屋全体に静けさが広がります。

カーテンやテーブルクロスに使えば、日々の暮らしの中で自然と秋を感じられるでしょう。

コットンで温もりをプラス

コットンは、からし色朽葉色のような温かみのある色が映える素材です。

クッションカバーやブランケットに取り入れれば、ソファに座ったときにほっとする空間が生まれます。

「洗い替え」感覚で気軽に変えられるのが、ファブリックの魅力。
季節が変わったら、また次の色へ。
そんな軽やかさが、暮らしを楽しくしてくれます。

器とトレイで食卓に秋を迎える

毎日使う器やトレイも、秋色を取り入れやすいアイテムです。

陶器の器の温かみのある色――栗色深緑――は、秋の食卓によく似合います。

また、木製のトレイやカッティングボードは、朽葉色栗色そのもの。

パンを置いたり、お茶の時間に使ったり。
毎日手に取るものだからこそ、季節感が自然に暮らしに染み込んでいきます。

「飾る」より「置く」――自然物のディスプレイ

ドライフラワー、ススキ、ユーカリ、枝もの

これらの自然物は、秋の色そのものを持っています。
色あせた美しさは、まさに秋の静けさ

また、花瓶の色も意識してみましょう。
灰桜藍鼠のような控えめなトーンの花瓶を選ぶと、花や枝の色が引き立ちます。

大切なのは、「完璧に飾ろうとしない」こと。
自然のままの姿を、そのまま置くだけでいい。
それだけで、お部屋に秋の空気を感じられることでしょう。

素材の質感で、秋の深みをつくる

木のテーブルの上にリネンの布と陶器の器が置かれた、あたたかみのある秋のテーブルシーン。
木と布と陶――異なる素材が重なり合うことで、秋の深みが生まれる

触れて感じる秋――テクスチャーの重要性

秋の色を感じるとき、いちばん心に残るのは「質感」かもしれません。

秋の色は、色そのものだけでなく、「マット」、「ざらり」、「なめらか」といったテクスチャーとセットになって、その魅力を発揮します。

リネンのしわ、木目、陶器の釉薬のムラ

――これらが「色の表情」を作っているのです。
同じ朽葉色でも、つるつるのプラスチックと、ざらりとした陶器では、まったく印象が変わります。

だからこそ、秋色を選ぶときは、実際に触れてみることが大切

手触り、重さ、温度。
それらすべてが、秋らしさを作り出しています。

木×布×陶、異素材の組み合わせで奥行きを出す

秋色の魅力を最大限に引き出すなら、異なる素材を組み合わせてみてください。

例えば、朽葉色の木製トレイに、灰桜のリネンを敷き、深緑の陶器を置く――。

素材の質感がぶつかり合うことで、空間に「層」が生まれます

単調にならず、でもうるさくならない。
そのバランスが、心地よい秋の空間を作るのです。

「経年変化」を楽しむ色選び

秋色のもう一つの魅力は、時間が経っても美しいこと。
色あせ、くすみ、使い込んだ風合い――それ自体が秋らしさです。

新しさよりも「馴染む」ことを大切にする

そんな選び方が、時とともに味わいを深める“秋色の暮らし”へと導いてくれます。

光と時間の流れで、秋色は変わる

秋の午後、紅葉の葉がやわらかな光と影を落とす様子。
時間とともに移ろう光が、同じ色に新しい表情を与えてくれる

時刻で変わる「色の表情」を楽しむ

秋の色の魅力は、光の加減によって少しずつ表情を変えるところにあります。

朝の光は静かで淡く、薄香灰桜が美しく映えます。
午後になると光が金色がかり、からし色朽葉色が温かく輝き始めます。
そして夕暮れ。影がゆっくりと濃くなり、深緑藍鼠がしっとりとした深みを帯びていきます。

同じ布でも、朝と夕方では違う顔を見せてくれる。
それを眺めるだけで、時間の流れを感じる暮らしになります。

照明の色温度で、秋の空気をつくる

秋らしい空間を作るなら、照明の色温度も見直してみましょう。

💡昼白色から電球色へシフトするだけで、部屋の雰囲気が秋らしくなります。

また、間接照明を使って「影」を意識するのもおすすめです。
ゆらめくキャンドルの灯りが、静かな夜の時間をより豊かにしてくれます。

「光を足す」より「影を愛でる」暮らし

秋の穏やかさは、実は「影」にあるのかもしれません。

リネンの織り目が作る影、枝ものの影、器の影。

明るすぎない空間にこそ、秋色は映えるのです。

光によって「育つ」秋の色。
その変化をゆっくり眺めることが、季節を感じる暮らしの小さな喜びになっていきます。

秋の色をまとうことは、季節に”応える”こと

柔らかな光が差し込むリビング。ベージュのソファとグリーンの植物が調和する穏やかな空間。
季節に“応える”とは、暮らしの中で静かに自然と調和していくこと

秋の色を部屋に取り入れることは、ただの模様替えではなく、自然の移ろいにそっと“応える”ことなのかもしれません。

からし色のクッション一枚でも、朽葉色の木のトレイでも、灰桜のカーテン越しに見る午後の光でも。
小さな色の変化が、心の中の”季節”をゆっくりと動かしていきます。

お部屋が秋色をまとうとき、暮らしもまた、静かに穏やかに落ち着いていくのだと思います。


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読書:音楽や本との出会いがもたらす安らぎ
:自然や風景に触れてリフレッシュ
心のやすらぎ:がんばりすぎない時間をつくるヒント

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