茅葺き屋根の下で過ごす、秋のゆったり散策
秋の風が心地よい季節。
少し足を延ばして、古民家が佇む公園を歩いてみませんか。
風に揺れるすすき、茅葺き屋根、囲炉裏の煙、そして縁側に差し込む秋の光。
そこには、どこか懐かしくて、静かに流れる時間があります。
忙しい日常を少し離れて、昔の暮らしにそっと触れる一日。
今回は、都心から気軽に訪れられる古民家のある公園をめぐりながら、秋の穏やかな過ごし方をご紹介します。
古民家で過ごす秋の魅力

時を超えて残る「ぬくもりの風景」
古民家を訪れると、最初に気づくのは空気の違いかもしれません。
茅葺き屋根、太い木の柱、土壁――すべて自然の素材でできていて、季節の温度や湿度をやわらかく受け止め、空気を穏やかに整えてくれます。
だからこそ、どこか包まれるような安心感があるのです。
秋の日に、畳や板の間が柔らかく照らされる風景。
そこには現代の住まいでは味わいにくい、独特の静けさがあります。
車の音も、スマートフォンの通知音もない空間で過ごす時間は、日常とは違うリズムを思い出させてくれるでしょう。
古民家の“静けさ”は、音のない時間ではなく、自然の音に包まれる時間です。
五感で感じる自然の暮らし
古民家のある公園では、季節の移ろいを五感で感じることができます。
窓の外に広がる田畑や里山の風景、色づきはじめた木々。
秋ならではの風景が、古民家の佇まいと自然に溶け合っています。
焚き火の香りが漂い、落ち葉を踏む音やすすきの揺れる姿。
そんな何気ない瞬間に、“季節がここにある”という確かな実感が生まれるのです。
🕰️ 歩く速度をゆるめることで、見過ごしていた季節の声が聞こえてきます。
秋に訪れたい古民家スポット(関東)
秋の散策におすすめの、関東圏にある古民家スポットを3つご紹介します。
どれも都心からアクセスしやすく、半日から一日かけてゆっくり過ごせる場所です。
【東京・小金井市】江戸東京たてもの園

江戸東京たてもの園は、江戸時代から昭和初期までの歴史的建造物を移築・復元した屋外博物館です。
小金井公園の中にあり、緑に囲まれた園内で約30棟の歴史的建物をゆっくり見て回れます。
茅葺の家だけでなく、武家屋敷、商家、銭湯、洋館など、さまざまな時代と用途の建築が並ぶ様子は、まるで時をまたいで散歩しているかのようです。
秋の見どころ
特に秋におすすめなのが、夕方の「下町中通り」エリア。
傾きかけた太陽の光が、昭和初期の商店街を照らす風景は、ノスタルジックで美しいです。
古い看板建築や文具店、化粧品店などが並ぶ通りを歩くと、時間の流れがゆっくりになったように感じられます。
立ち寄りスポット
園内にある「武蔵野茶房」は、洋館を利用した休憩スペース。
木漏れ日の差し込む静かな空間で、お茶を飲みながらひと息つけます。
午後からゆっくり訪れると、光の移ろいを感じながら歩く時間を楽しめます。
平日は比較的空いているので、静かに散策したい方にはおすすめです。
所在地: 東京都小金井市桜町3-7-1
アクセス: JR中央線「武蔵小金井駅」北口からバス約5分、「小金井公園西口」下車徒歩5分
開園時間: 9:30〜17:30(10月〜3月は〜16:30) ※月曜休園
入園料: 一般400円
【神奈川・川崎市】日本民家園

日本民家園は、東北から九州まで、日本各地の古民家を移築・保存している野外博物館です。
20棟以上の建物があり、それぞれの地域の気候や暮らしに合わせた建築様式を見ることができます。
広い敷地を歩きながら、日本の民家建築の多様性と美しさに触れられる場所です。
秋の見どころ
秋に訪れるなら、囲炉裏に火が入る「合掌造りの家」にぜひ行ってみてください。
白川郷から移築された建物の中で、煙がゆらめく様子は、まさに昔の暮らしそのもの。
茅葺き屋根の下に座って、囲炉裏の温かさを感じながら過ごす時間は、現代ではなかなか味わえない貴重な体験です。
立ち寄りスポット
藍染め体験や展示イベントなども開催されています(要予約・確認)。
昔の暮らしを感じてみるのも、より深い理解につながるでしょう。
夕方は秋の柔らかい光が建物を照らし、写真撮影にも最適な時間帯。
影が長く伸びる景色は絵画のようです。
所在地: 神奈川県川崎市多摩区枡形7-1-1
アクセス: 小田急線「向ヶ丘遊園駅」南口から徒歩約13分
開園時間: 9:30〜17:00(11月〜2月は〜16:30) ※月曜休園
入園料: 一般500円
【東京・立川市】昭和記念公園「こもれびの里」

昭和記念公園の一角にある「こもれびの里」は、1950年代の武蔵野地域の農村風景を再現したエリアです。
茅葺き屋根の農家、田んぼ、畑、雑木林が広がり、里山の暮らしを体感できます。
広大な昭和記念公園の中でも、特に落ち着いた雰囲気のエリアで、季節ごとの農作業風景を見ることもできます。
秋の見どころ
秋の「こもれびの里」は、稲穂が実る黄金色の田んぼと茅葺き屋根のコントラストが美しい季節。
日本の原風景ともいえる光景が広がります。
実際に稲刈り体験などのイベントが開催されることもあり、昔ながらの農作業に触れることもできます。
立ち寄りスポット
昭和記念公園は広大で、他にも見所がいっぱいです。
コスモスやコキアなどの秋らしい植物や紅葉も楽しめます。
秋晴れの日の午前中がおすすめ。
木々の間から差し込む光が、田んぼや畑を照らす様子は格別です。
公園全体が広いので、「こもれびの里」を目的に訪れる場合は、最寄りの「西立川口」から入るとアクセスしやすいでしょう。
所在地: 東京都立川市緑町3173
アクセス: JR青梅線「西立川駅」から徒歩約2分(西立川口)
開園時間: 9:30〜17:00(季節により変動あり) ※年末年始・1月の第3月曜から金曜休園
入園料: 一般450円
コラム:遠野ふるさと村

ここでは私が実際に訪れて印象に残った「遠野ふるさと村」をご紹介します。
そこには、昔ながらの暮らしの温もりがそのまま息づいていました。
岩手県遠野市の郊外にある「遠野ふるさと村」は、昭和初期の農村集落を再現した施設。
広い里山の風景の中に、茅葺き屋根の曲がり家(まがりや)などが点在し、静かな時間が流れています。
※曲がり家:母屋と馬屋がL字型につながった独特の建築様式
その趣のある佇まいに、思わず「ただいま!」と言ってしまいそうな懐かしさがあります。
私が訪れた時には、縁側に干し柿が揺れ、日に照らされた橙色が映えていました。
その下で、のんびりとした穏やかなひとときを過ごしたのを覚えています。
遠野は、カッパや座敷わらしなどの民話の里であり、また日本の原風景と言われる里山が残されている土地です。
遠野ふるさと村や伝承園などでは、季節の行事や体験会も行われています。
昔ながらの暮らしをぜひ体感してみてください。
遠野でさらにおすすめなのが、「道の駅 遠野 風の丘」です。
魅力的なお店や物産品がたくさんありすぎて、つい長居してしまうかもしれません☺️
立ち寄りの時間をたっぷり取って行かれることをおすすめします!
道の駅 遠野 風の丘 公式サイト
遠野の観光情報については、「遠野時間」(遠野市観光情報サイト)をご覧ください。
遠野の魅力が満載です🎵
身近な場所でも“懐かしさ”を見つけてみよう

今回ご紹介したのは関東の施設ですが、全国各地にも「民家園」や「古民家公園」と呼ばれる場所が点在しています。
地域によって建物の形や風景も異なり、それぞれに味わいがあります。
”古民家 公園 ○○(地域名)”などで検索してみると、思いのほか近くに見つかるかもしれません。
小さな施設でも、季節のうつろいを感じられる場所はきっとあるはずです。
遠出しなくても、”懐かしい風景”に出会える喜び。
それもまた、古民家散策の魅力のひとつです。
地域の歴史や文化を伝える場所として、大切に保存されている古民家たち。
訪れることで、その土地の暮らしや人々の知恵、そして静かな時間の流れに触れることができるでしょう。
秋の光の中で、心をゆるめる時間を

古民家を歩くひとときは、過去をたどる旅ではなく、“今”の自分を静かに取り戻す時間です。
秋の光と影が交わる場所で、少しだけ立ち止まってみてください。
そこには、忙しさの中で忘れていた「穏やかな時間」が、静かに待っています。
茅葺き屋根の下で過ごす時間、囲炉裏のぬくもり、木々の間を歩く静けさ。
それらはきっと、私たちに「ゆっくり過ごす」という感覚を思い出させてくれるでしょう。
この秋、少しだけ足を延ばして、古民家のある風景に出かけてみませんか。
江戸東京たてもの園(東京都小金井市)
日本民家園(神奈川県川崎市)
昭和記念公園 こもれびの里(東京都立川市)
遠野ふるさと村(岩手県遠野市)
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